純粋と純粋、かさねてポルノ ※R18
先程まで、咥内を占めていた砂糖菓子の甘いものは、全て齧りつくした。
今度、口に含む質量をまして昂ぶるものは決して甘い味がするわけでもないのに、アフロディーテはしっかりと根元を握り込み、その先端から溢れてくる液体がまるで蜜であるかのように、舌で舐め取っては飲みくだす。
硬く張り詰めたアフロディーテにとってのスイーツは、舐めても舐めても溶けないものだし、うっかり歯を立てたら、息の根が止まってしまう可能性もあるものだ。アフロディーテは、手のひらの中で揉みこむたびにあたたかく波打つスイーツの根元から先のくびれの部分までをゆっくりと舐めあげると、潤む唇をてらりと光らせてぱくりとシロップが溢れてくる先端を口に含んで、吸い上げた。
スイーツを頬張る瞬間に、垣間見えたアフロディーテの舌先の粘膜の色は、ロリポップのショッキングカラーよりもよほどショッキングにデスマスクを襲った。
そして、続けざまに感じる生暖かな咥内でねぶられる快感に、顔を顰める。
「ハッ……やっべ…そこイイ…」
「んー……」
頬の内側に含まれ、柔壁に押し付けられて直に感じさせられる粘膜は濁音なんか聞こえるわけもないほどの柔らかさで、張り出したくびれの部分をなぞる舌先に、口の中でころころと転がされているようだった。
デスマスクがスイーツを貪る姿へ満足そうに唇を歪めれば、口の中でスイーツと遊びながら脈打つ根元を擦り上げているアフロディーテは、得意げにチラチラとデスマスクを見上げて薄水色の瞳だけで笑う。
私のぺろぺろはどうだ?といわんばかりに撓む瞳を見ながら、デスマスクはニヤリと笑みを落として、身体の中心でゆっくりと上下に揺れ出した頭を撫でた。
先端から徐々に柔壁と快感の浸食がはじまっていく。
乱暴に床へと転がされて、歯をカチカチと鳴らされた時には、純粋性の欠片すらも見あたらなかったのに、足の間で微かにたてられる水音と共に、一定のリズムで与えられる愛撫には、目の前の甘いものへただ心を奪われて夢中になるが故の、純粋があった。粘膜に覆いつくされて強烈な吸引と擦られる快感に、デスマスクは短く息をする。
擦られながら、先の溝を舌先でつつかれて思わず声が漏れそうになるのを、冷や汗と共に堪えたと思ったら、溢れる液体と快感ごとすっぽりと根元までくわえ込まれ、鈍く重たい快感に息が詰まる。

「っ…あー…あんまもたねえかも。オレ、今日」
デスマスクは淡いグレーの天井を見上げ、双魚宮はたいして掃除もしてない癖に汚れがないなと思う。アフロディーテはじゅる、と音をたてながらスイーツを唇からはなした。
「何?…ほら見ろ。だから舐めるのは嫌いだといったんだ。お前ばかりずるいぞ。デス」
唾液とスイーツのシロップでぬめる唇を手の甲でぐいとぬぐい、アフロディーテはデスマスクの唇から囁かれた言葉に薄ら笑う。
「……もっとゆっくりさあ、ぺろぺろしてくんねえ?」
「ぺろぺろ…ああ、ぺろぺろ。こうか?」
アフロディーテを足の間に挟んだまま、デスマスクは上体を起こすと、しとどに濡れたものへちろちろと舌を這わせる顔を見下ろした。
「ちょっとこっち見ろよ」
「あー?」
舌先からスイーツをはなさず、視線だけを向けたアフロディーテのほっそりとした顎先へ指を這わせ、デスマスクはそのまま顔だけを上げさせる。
「い~い眺め。ポルノみてえ」
目の前にあるスイーツを無理矢理に見上げる形を取らされて、アフロディーテは一瞬不愉快そうに眉をしかめるも、ヒュウ、と聞こえてきたからかいの口笛と、言葉では余裕を溢しても、目に映った案外切迫しているように歪められるデスマスクの表情に満足をした。
顎先を掬い、頬を撫ではじめた蟹爪の先へ、スイーツを貪る合間に舌を這わせる。

「ン…まっずいゆび」
「この指をナメちゃイケねえ…ッ…この指でオマエはメロメロになんだろ?」
「…まあ、今メロメロなのはお前だけどね」
フフっと小さく声を漏らしてアフロディーテは笑い、どこか染み出るシロップの量が増してきたようなスイーツに浮かぶ血管を、見せつけるようになぞった。
「ばッ…か…わざとな。これはわざとだ」
「わざとだったらポルノみたいにもっと喘げば?わざとらしく感じてみなよ」
「あ?ポルノなのはオレじゃねえ。オマエだオマエ。ぺろぺろキャンディープレイ」
「ロリポップなプレイもたまにはいいかもね?」
「あの頃のオマエは確かにロリでポップだったよ、それがこんなになっちまって……」
「半分以上、こうなったのは貴様の所為だ。そもそもだ、たまには飴だって齧らずに舐めたい時だってあるのに嘘つきだから駄目なんだ」
ショッキングブルーとピンクの色をしていたキャンディを齧った唇は、潤んだ桃色で怪訝に言葉を吐いて、感情の高まりを露わにする人体の一器官を口に含んで舐める。
「それもオマエをエロくするためのオレ様の調教ってやつ?」
全てはこうなる事を見越してだな、と続けさまに呟いたデスマスクのスイーツへ、アフロディーテは有無を言わさずに緩く歯をたてた。
スイーツを頬で転がしながら喉の奥で笑い、揺れたのは薄水色の髪と瞳だった。
「……ってえな。そっと噛めよそっと。ちぎれんだろ。つーかでちまうだろ」
根元を甘く噛みつつ先端へと唇を這い登らせて合間に啄ばむようなキスを施しながら、アフロディーテはそっとスイーツの下方にある二つのキャンディを指先で弄びはじめた。舌先で転がされて、指先でも転がされて、確かに気持ちが良くないわけではない。むしろじわじわと追い詰められる性欲は心地が良すぎた。
だから結果として舌でも手でも、手のひらの上ですらも転がされている感がいなめないと、デスマスクは思うのだ。
ころころころころ飽きもしないで、結果として。
デスマスクは、欲情の火が灯りすぎる赤い瞳を細めて問う。

「オレのキャンディ、うめえ?」
転がされてるなんてのはとっくの昔からで、それこそ嫌で嫌で仕方のなかった修行の地へ発つときにも、不貞腐れるところまでは想像がついても、その後しおらしく涙でも流すもんだと思ったから甘いものをやったのに、殴りあいの喧嘩になった。
「まずいって言ってるだろうが」
死にものぐるいで生き延びて聖域に帰ってきてやったのに帰還の抱擁もなければ、双魚宮こそすでに、遠い遠い修行地に赴いていて、もぬけの殻だった。
「素直じゃねえな」
たった一瓶のキャンディのために寝る間すら惜しんだその時の自分こそ、よっぽど純粋性の塊じゃねえかとデスマスクは内心で独りごちて、やわやわと揉まれる手のひらの感触と、唇の柔らかさを追う。
「あー…ちょ、でるでる」
薄水色の尖った爪の先で掻かれてデスマスクははあ、と一度大きく溜息をつき、アフロディーテの前髪を緩く掻きあげた。
ぬるりとほどよく厚みのある唇から飛び出してきた己のスイーツの一部分を見て、やっぱりピュアには程遠い姿だと思う。
キュ、と握られた根元にじりじりと焦げつくような吐きだしたい熱がある。
根元を握られるのと同時に、手のひらで転がされていたものも共に握りこまれて、デスマスクはう、と眉を顰めた。
「……なんか私、握ってる気がしてきた。色んな意味で命。コレ、ギュって握りつぶしたら死ぬよな」
じっと見つめてくる視線をなんとか顰めた瞳で受け取めて、デスマスクは鼻で笑う。
「……タマ、だけに?」
「よくわかってるじゃないか。お前の命は舐めることなく私がしっかり噛んで栄養にしてやるからな…安心するといいぞ。デス」
「わーかったから…あ、も、はな……アッ。」
ああ、ヤラれた。
そう思う間もなく、デスマスクは齧られた瞬間に髪にまで飛んだスイーツの苦いものをアフロディーテに咎められて、今度機嫌を伺うにはペロペロキャンディが何本必要かと、ぼんやり頭の中で数えてみるのだった。